11/04/25●東日本大震災から1か月半、日本の医療の問題点を考える 印刷

 3月11日の「東日本大震災」から1カ月半が経った。まさに、あっという間の1カ月半だった。すでに春も過ぎ、すぐ初夏のゴールデンうウイークがやってくる。

 そこで、この震災後で浮き彫りになった日本の医療の問題点を、ここで整理してお伝えしたいと思う。あまりに多くの問題が、この大震災で問題化したが、私がとくに問題にしたいのは2点。ひとつは、緊急医療体制の不備、もうひとつは、海外からの医師団の受け入れ問題である。

  まず、緊急医療体制だが、 今回の東日本大震災では、医療救助の遅れが目立った。被災地にある病院から運ばれた患者が、十分なケアを受けられず死亡したり、ライフラインが止まったために災害拠点病院でも患者に対応できなかったりした例が相次いだ。それでも、阪神大震災のときよりはマシという声があるが、その程度では今後が思いやられる。

 そこで私は、阪神大震災のときにも提言したが、日本は一刻も早く「病院船」を持つべきだと考えている。今回は、被災地への陸路が遮断されただけに、海からの救助活動がなによりも重要だった。ところが、それをしても患者を運び込める設備のある病院がなければ、救助も無意味になる。

 こうしたことをカバーできるのが、病院船である。病院船というのは、もともとは戦時に傷病兵を収容・治療するために軍隊が所有したものだったが、国際赤十字活動が確立されるにつれ、国際法上でも軍事的攻撃から保護される船として、現在では多くの国々、各国の海軍が所有している。しかし、日本は島国にもかかわらず、1隻も持っていないのである。 

 続いては、相も変わらず、日本政府は海外からの医師チームを即座に受け入れなかった問題だ。 またもや日本政府は阪神大震災のときと同じように即断できず、救済活動が遅れてしまった。なぜ、一刻を争う事態で、こんなことが起こるのだろうか?

 大震災発生から10日後の3月22日、米誌『タイム』(電子版)は、「日本の官僚機構が救援を遅らせているのか?」というテーマでこう書いた。「日本よりはるかにインフラ整備が遅れている開発途上国でさえ、災害発生から4日もたてば援助物資が被災民の手に届く。だが東北では10万人の自衛隊が救援活動を行っているにもかかわらず、援助物資が届くのに恐ろしいほど時間がかかっている」「日本は入り組んだ官僚機構に問題があり、規制好きな国民性が“合法的な壁”として立ちふさがっている」

 まさに、これは日本の恥である。日本では、日本の医師免許を持っている人間以外は医療活動ができないのだ。しかし、緊急時にそんな規制を持ち出すべきではない。

 今回は、ニュージーランドや中国から「日本に恩返したい」と医療チームが派遣された。しかし、その「恩返し」の思いを日本政府がソデにしたのだ。外務省にいたっては、地震から2週間以上たった3月27日になってやっと、イスラエルから医療支援チームを受け入れると発表した。このイスラエルチームは、29日から被害の大きかった宮城県南三陸町を中心に、避難所などで、お年寄りや乳幼児を診察を始めた。 被災地では二次被災として、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症拡大が懸念されていたので、この医療活動は大いに役立った。しかし、結局、日本政府が診療活動を受け入れたのはイスラエルチームだけだった。

 これでは、まさに鎖国と言いようがない。日本は一刻も早く、海外各国との医師免許、医療に関しての整合性を保つ措置を講じるべきだ。