09/12/25■2010年度予算決着。診療報酬10年ぶりにプラス改定に! 印刷

 やっとのことで、民主党の予算編成がまとまった。なかでも、もめにもめた医療費の診療報酬改定は10年ぶりにプラス改定され、地方交付税も大幅増額を認められることになった。

 この問題をめぐっては、財務省が総額の引き下げを譲らず、藤井財務大臣が、長妻厚生労働大臣を「政治論ばかりだ」と批判する一幕もあった。しかし、最後は、官邸(鳩山首相)の意向で、平野官房長官が両大臣を呼び、プラス約0.19%という数字を財務省にのんでもらうかたちで決着したという。

 もちろん、これは来年夏の参院選対策でもある。これが、自民党がやったなら、どのマスコミもそう書くだろう。しかし、民主党は「コンクリートから人へ」が公約だから、医療費のアップ改定は公約をなんとか実現させたということになる。

 長妻大臣も会見で「人間を大切にするこの政権の第一歩を踏み出せた」と語った。

 

 しかし、この程度のアップで医療崩壊は食い止められないのは言うまでもない。年々増加するする医療費を抑えようと、診療報酬は2002年度以来4回連続でマイナスとなっていたが、それをプラスに転じさせたぐらいで、公約実現というのも大げさすぎる。

 たしかに自公政権で社会保障費は抑制された。財政悪化による経済衰退のほうが、社会保障の低下より、より国民にとってマイナスだからだ。

 

 

 私は、診療報酬を毎年、毎年アップさせていくほど、いまの日本に余裕があるとは思えない。いまは、2番底が懸念される最悪の時期だけに、全体を考えれば、医療費を抑制しても経済対策に予算をまわすべきだろうと考える。

 一介の医者としては、診療報酬のアップはありがたいが、日本全体の問題から言えば、いまはそのときではない。医療崩壊を食い止めるのは、おカネだけではない、もっと違う方法がある。

 

 いずれにせよ、アップといっても、今回の改定はほんのわずかだ。改定率は、全体で0.19%、本体は1.55%(医科1.74%、歯科2.09%、調剤0.52%)、薬価・医療材料が▲1.36%(内訳=薬価▲1.23%・薬価ベース▲5.75%、材料▲0.13%)。医科では入院が3.03%、外来が0.31%の配分で、急性期入院医療に4000億円程度を充てる方針。

 また、配分の見直しによって救急・産科・小児科・外科の充実などを図るという。

 以上が格子だが、本体部分については、医療費ベースで5700億円の増額になるという。