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18/01/31●新著『手術するがん、しないがん』(彩図社、1月30日発売)のご案内

私の新著『手術するがん、しないがん』(彩図社、130日発売、1404円)が2018130日に発売されました。

 そこで、この本がどういう本であるのか? 本の「はじめに」に書きましたので、それをここに転載し、本の紹介にしたいと思います。日本人の2人に1人ががんになると言われていますが、私自身、すでに高齢者になったせいもあるのでしょう、周囲からがんの相談をよく受けます。そんなときの答えをまとめたものが本書です。

 

『手術するがん、しないがん』はじめに 全文掲載

  近年、がんが発見された高齢者が、手術を受けないケースが増えています。これは、じつは“いい傾向”であり、私自身も「75歳を超えたら手術はするべきではありません」と提唱しています。

 もちろん、がんの部位(胃がん、大腸がん、肺がんなど、どこにがんができたか)にもよりますが、実際のところ、手術を受けたより受けなかったほうが結果的によかったというケースは多いのです。

 高齢者の場合、当然ですが、体力が落ちています。「自然治癒力(しぜんちゆりよく)」(免疫力(めんえきりよく))も落ちています。したがって、がんの切除手術をすると、その副作用や肉体的負担に耐えられないために、かえって悪化させてしまうことが多いのです。合併症を起こしてしまったり、また、手術後の抗がん剤治療の副作用で衰弱してしまったりするのです。

 となると、手術を受けることが寿命を縮めることにつながってしまいます。

 

 もちろん、手術を受けるか受けないかを年齢だけで決めるわけにはいきません。手術に耐えうる体力を持つ健康な75歳以上の後期高齢者の方もいれば、65歳でも糖尿病や高血圧などの持病を抱えている高齢者の方もいるからです。

 しかし、そうはいっても、年齢という要素は大きいと言わざるをえません。なぜなら、どんなに健康な方でも老化には勝てず、75歳をすぎると人間は急速に老化していくからです。

 

 本文中で詳しく説明しますが、「健康寿命」という概念があります。これは、人間がいくつまで他人の助けを借りずに1人で生きられるかの指標です。厚生労働省が公表している健康寿命は、現時点で、男性が約71歳、女性が74歳ですから、75歳を待たずにすでに多くの人が、日常生活になんらかの支障をきたすようになっていると考えられます。

 たとえば、ちょっと長く歩くとそれだけで足腰が痛くなったり、階段を上がるだけで息切れがしたりするのも、健康寿命が限界にきている現れです。

 そんな状態で、がんが発見され。医者から手術を勧められたどうしたらいいでしょうか?

 

 本書では、こうした問題を中心にすえて、がんになったらどうしたらいいかを読者のみなさんと一緒に考えていこうと、25のトピックを選んで、それぞれ解説しています。 

 どうして、こんなテーマを扱うことにしたかというと、高齢社会になったいま、がんになったらどうしたらいいのか?ということが、多くに人にとってもっとも切実な問題だからです。また、私もすでに70代に達したため、これは私自身の問題でもあるからです。

 結論から言えば、すべてを決めるのは、本人の意思です。しかし、多くの方が決めるための知識や知見を持っていません。意思が定まらないのです。がんをどうやって捉え、それと自分の命とどう折り合っていっていいのか?よくわかっていないのです。

 ですから、本人も家族も、そして、治療する側の医師も迷ってしまいます。これでは、いい結果が出るわけがありません。

 

 いまや日本人の「2人に1人ががんになる」と言われています。また、「3人に1人ががんで死亡する」とも言われています。そこで、本当にそうなのかと見ると、実際、その通りになっています。

 ガンの罹患率(りかんりつ)については、最新では国立がん研究センターの調査結果(2012年データ)がありますが、それによると、男性の生涯ガン罹患リスクは63%、女性が47%となっています 。男女合わせると55%がガンに罹患することになっているので、「2人に1人はがんになる」というのはその通りなのです。そして、この罹患率は高齢になればなるほど高くなります。

 つまり、がんになったらどうするか? どんな治療を受けたらいいか? は、歳をとったらもちろんのこと、歳をとる前から考えておくべきことなのです。

 

 それでは、「3人に1人ががんで死亡する」というのはどうでしょうか? これは、厚生労働省が発表している「人口動態統計」で調べることができます。最新の2015年の調査結果によると、日本全体の死亡者数は129444人で、そのうちがんによる死亡者数は37346人となっています 。割合にすると28.7%です。つまり、「3人に1人ががんで死亡する」というのも、おおむねその通りなのです。 

 いまや誰でも知っていますが、日本人の死因の第1位はがんです。がんで死ぬ人は年々増え続けています。

 大学病院では、病院で死んだ患者さんを病理解剖しますが、ほかの疾患で亡くなれた高齢者の部位からがんが発見されることがよくあります。ということは、がんが直接の死因ではなくとも、多くの人ががんに罹るということです。

ただ、そのがんが生前、発見されるか発見されないかの違いだけとも言えるのです。

 いずれにしても、これほどがんが私たちの暮らしに日常的に入り込んできた時代はありません。ですから、がんになったらどうするか? は、常日ごろから考えておくべきでしょう。

 

 本書は、筆者の意見も交えて、がんとどう折り合って生き、そして幸せに最期を迎えるかを考えるための本です。

  がんをいたずらに怖がってはいけません。むしろ、ここまで医学が発達し、治療法もある程度確立されたいま、がんになったら、それを積極に受け入れるべきです。

 そして、高齢者の方はとくに、がんになったらむしろ幸せと考えるべきです。なぜなら、がんは病気と言うより老化現象の現れですから、それを受け止めることで、苦しまずに穏やかに死を迎えることができるからです。

 本書の内容が、読者の人生の参考になることができれば、筆者としては幸甚です。

 

 

 

 
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