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長生きは本当に幸せか?(5) 余命とはなにか?自分の余命を知っておこう 

 医者にとって「余命宣告」をすることほど辛いことはありません。たいていの場合、医者は余命を想定より短く言います。1年なら半年、半年なら3カ月と言うケースが多いのです。もし宣告より早く死亡した場合、家族に恨まれるので、それを避けたいのです。宣告より長く生きれば、家族はよかったと思うはずだからです。

 

 ただ、余命の算出には定義があります。たとえば、「余命宣告1年」というのは、定義から言うと「生存期間の中央値」が1年ということです。

 余命宣告となるのは、もはや治療しても持ちそうもない、治療を行うのが困難と判断したときです。そうなったとき、その後どれくらいの期間生存できるかを想定するわけです。この場合に考慮するのが生存期間の中央値で、これはその病気集団、つまり同じような胃がんなら胃がんの患者集団において、「50%の患者が亡くなるまで」の期間のことです。つまり、同じ胃がん患者が100人いた場合、50人目が亡くなった時点が胃がんの「生存期間中央値=患者の余命」となります。全患者の平均値ではないのです。

 したがって、胃がん患者の生存期間中央値が1年だとしても、3年、5年と生きる人が一定数いるわけです。また、それよりも早く亡くなる患者も一定数います。つまり、「余命1年」といっても、その通りになるほうが少ないのです。

 

 ただし、末期がんの治療中の患者さんで、主治医から「あと2週間ぐらいでしょう」と言われた場合は、おそらくその通りになります。これは、病状から判断しているからです。もはや食べ物を受け付けない、ときどき呼吸困難に陥っている、意識がもうろうとしてきたとなれば、よほど未熟な医者でなければ、患者がどれくらい持ちこたえられるかわかります。

 

 ところで、余命を考える場合、健康な人間であっても、それを知っておくことは大切です。たとえば、60歳で健康であっても、あと自分の命はどれくらいあるのか?と思って生きるのと、ただ漫然と生きるのとでは、人生に対する向き合い方が違ってくるからです。

 厚労省は、「簡易生命表」を毎年発表し、そこから「平均余命」が導き出されます。平均余命というのは、各年齢の人がその後平均何年生きられるかを算定したものです。たとえば、平成28年度の簡易生命表によると、65歳の男性の平均余命は19.55年で、これは「いま65歳の男性は84.55歳まで生きる可能性がある」(65+19.5584.55)ということを示します。

 平均余命よりも「平均寿命」のほうが一般的に多く使われていますが、平均寿命はあなたが何歳まで生きるかということを表してはいません。平均寿命は、その年に生まれた赤ん坊が何歳まで生きるかを表しているに過ぎないからです。

 

 201810月、厚労省は社会保障審議会の年金部会に、平均余命に基づいた「何歳まで生きるか」のデータを示しました。それが次の表です。

 それによれば、平成27年(2015年)に65歳になった昭和25年(1950年)生まれの男性の73%80歳、35%90歳まで生きます。女性の場合は、87%80歳、60%90歳まで生きます。平成2年(1990年)生まれの男性は79%80歳、44%90歳、6%100歳、女性は91%80歳、69%90歳、20%100歳まで生きるのです。

 現在、「人生100年時代」がさかんに言われていますが、それは、いまの高齢者が人生100年を生きるということではありません。

 

2019年5月 

 

 
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