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長生きは本当に幸せか?(6) 長寿遺伝子を操作すれば老化は防げる!?

 はたして私たちは何歳まで生きられるのでしょうか?  

 現在、通説化しているのが「115歳限界説」です。これまでの人類の最長寿者は、ジャンヌ・カルマンさんというフランス人女性で122歳です。公的な記録で確認できる、120歳を突破した唯一の例です。日本人の記録は、泉重千代さんの120歳ですが、現在は否定され105歳だったとされています。泉重千代さん以後で、世界最高齢と認定された大川ミサヲさんは117歳でした。大川さん以後、世界最高齢と認定されたのは、イタリア人女性のエマ・モラノさんでしたが、20174月に117歳と137日で亡くなっています。こうした事実から見て、115歳説はおおむね妥当だと言えるのではないでしょうか。

 

 現在、長寿の研究は日進月歩で進んでいます。人はなぜ老いるのか? を科学者たちは必死に解明しようとしています。ただし、研究は進んでいるものの、いまだに諸説があり、具体的には解明されていません。現在の最先端の研究は、生命の基本単位である細胞の研究ですが、それによると老化はもはや自然現象ではないというところまできています。となると、老化は病気と同じということになるので、治療も可能になります。その一方で、老化はやはり自然現象なのだから、寿命には限界があるという説も根強いのです。

 

 老化研究のアプローチとしては、実際の「長寿者」(100歳を越える「百寿者」=「センテナリアン」)に着目する方法と、細胞に着目する方法があります。

 

 

 細胞に着目した研究では、大別すると二つの説があります。一つは、ストレスや紫外線などの環境要因によって、細胞内に有害物質が発生し、機能低下が進んで老いるというもの。もう一つは、遺伝子によって老化や寿命が規定されているとするもの。これを「プログラム説」と呼んでいますが、この説では、それぞれの細胞には分裂できる限界がはじめから決められていて、その回数を越えて分裂できないとされています。細胞分裂の際に少しずつ発生する突然変異が、次第に蓄積されていき、最終的に破綻してしまうという「エラー説」もあります。いずれにしても、老化の研究は、いまでは遺伝子レベルになり、遺伝子の中に、長寿を司るものがあることがわかってきています。いわゆる「長寿遺伝子」です。

 

 長寿遺伝子は、米国マサチューセッツ工科大学教授のレオナルド・ガレンテ博士などのグループによって発見され、「サーチュイン」と呼ばれています。ただし、サーチュイン遺伝子1個ではなく、50個から100個ぐらいはあるとされており、現在7個が確認されています。また、DNAの末端部分にある「テロメア」という遺伝子も寿命に関係していることがわかっています。

 いまのところこれらの複数の遺伝子が寿命に影響を与えているという説が有力で、その数は約300種と言われています。

 長寿遺伝子は普段は眠っています。そのため、なんらかのかたちで活発化させれば、老化を遅らせ、寿命を延ばすことも可能だと考えられています。活性化させるスイッチが空腹ということもわかってきています。とはいえ、老化がどのように訪れ、なにが寿命を決めるのか、まだ決定打は出ていません。

 

 「不老不死」は、人類の夢です。しかし、人は死ぬから人生が貴重なのであって、死なない人生がありえるなど、私には想像もつきません。ちなみに、122歳まで生きたジャンヌ・カルマンさんの大好物は赤ワインとチョコレート。大川ミサヲさんは、たくさん食べて最低8時間は寝ており、鯖寿司が大好物でした。また、モラノさんはクスリを一切飲まず、1日に3個の卵を食べ、自家製のブランデーを飲み、ときどきチョコレートを食べるのが楽しみだったと言います。

2019年5月 

 
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