[これが医者の世界]学閥、給料、待遇から見たセンセイたち
[これが医者の世界]学閥、給料、待遇から見たセンセイたち - 「謝礼」を強要されたうえ手術ミス |
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ページ 4 の 10 医者と医療の崩壊の話を、ひとつ紹介する。これは、九州での話である。 心臓病や大動脈瘤など高度の医療技術を必要とする疾患は、一般の病院では治療が難しいため、「特定機能病院」と呼ばれる大病院や大学病院に入院するというケースが多い。九州のある地方に住むYさん(男性・66才)は、近所の病院で受けた健康診断で、胸部動脈瘤が見つかった。そこで、その病院長に紹介状を書いてもらい、特定機能病院に指定されたある公立病院で再検査に行った。 動脈瘤は破裂してからの手術では、命取りになる可能性が高い。しかし、検査の結果は、緊急性は認められなかった。ホッとしたYさんだったが、循環器外科の担当医は、Yさんが元気で抵抗力があるいま、瘤が大きくなる前に手術した方がいいと言った。家族は、しばらく様子を見てからにすればと気乗りしなかったが、Yさんは手術を決断した。 「入院したら、Sというベテランの看護婦がおるから安心や。いろいろ相談に乗ってくれるけんのう」と、紹介者の院長は言った。そこで、「謝礼」はどうしたらいいか聞くと、「それもS看護婦に聞けばわかるがな」と教えられた。 Yさんと家族が病室に入るとすぐ、S看護婦が訪ねてきた。 「入院中は何の心配もいらんがですよ。私たちがお世話しますから。ただ、手術前に先生方にご挨拶せんがいかんので、ご用意していますよね?」 この言葉を、S看護婦の親切な言葉と思ったYさん一家は、その後の言葉に驚いた。 「看護婦たちは手術後でもいいがですよ。でもねえ、執刀してくださる部長先生には10万円、手術前にお渡したほうがいいがですよ」 もちろん、Yさん一家は謝礼を用意していた。ただ、手術後に「お礼」として渡せばいいだろうと思っていた。しかも、用意して来たのは、3万円だった。 するとS看護婦は、そういう家族の気持ちを見透かしたように「手術は一人の先生じゃいけんでしょうが」と言い残してナース室へ入って行ったという。 もちろん、Yさん一家は、あわててお金を用意し、S看護婦の言いつけ通りにした。 手術当日、家族は手術時間を3時間前後と聞かされていた。ところが、4時間経ち、5時間経ってもYさんは手術室から出てこなかった。途中で1度、若い医師が「思ったより血管が脆くなっていて時間がかかります」と報告しに出てきた。 6時間近くたって、やっと「手術中」のライトが消えた。集中治療室に移されたYさんは麻酔が効いているとかで眠ったままだった。ところが、1日経っても2日経っても麻酔から醒めなかった。 「手術はうまくいったんですが、血管が脆くなっていましたから、どうも手術後に血栓かなにかが脳へ飛んじゃったらしんです」というのが担当医の説明だった。 「絶対に目覚めてくれますよね」という家族に、その医師は「そんな弱気にならずに元気を出してください」と慰めにもならないような言葉を残し、そそくさと集中治療室を出て行ったという。 手術から1週間後、S看護婦が「お見舞いに」と久しぶりに顔を出した。 「しばらく入院となればなにかと物入りでしょうがな……」と差し出された封筒の中には、手術前に渡した謝礼と同額の10万円が入っていた。 「いったんお支払いしたもんでがな、これは受け取れません」と封筒を返したYさんの家族だったが、そのとき「これは医療ミスだったのではないか」と思ったという。Yさんは2度と起き上がることはなく、入院生活は亡くなるまで1年半に及んだ。 |