[これが医者の世界]学閥、給料、待遇から見たセンセイたち
[これが医者の世界]学閥、給料、待遇から見たセンセイたち - 電子化によっても不正はなくならない |
ページ 10 の 10 現在、日本の医療保険財政は危機的状況にあるが、年間30兆円を超える医療費の約3割が、医療機関からの不正請求だとも言われている。驚くべき数字だが、それだけ医者の懐具合も厳しいということだ 医療費をめぐる不正は、2006年度をみると、124の医療機関が不正請求を摘発されて監査を受け、歯科医師24人、医師17人が保険医登録を取り消されている。また、そこまでいかなくても、個別指導を受けた医療関係者は、なんと約7000人にのぼっている。 そんなこともあって、厚生労働省は2007年から、診療報酬の不正請求対策として、架空請求や水増し請求等の不正を摘発する「医療Gメン」と呼ばれる指導医療官を増員する方針を固めた。ただし、「医療Gメン」の増員で目指す不正請求された診療報酬の返還額の目標は、わずか100億円である。例年の不正請求の返還額は約60億円だから、これを倍増させようというわけだ。しかし、そうして摘発しても、氷山の一角しかなくならいだろう。 そこで、現在、さらなる取り組みとして、レセプトの電子化が進められている。レセプトは現在のところ「紙」でも「電子媒体」でも請求ができるが、今後は、2011年4月までに約22万の医療施設・調剤薬局において、原則としてすべてオンライン請求化することを目指している。こうすれば、不正請求もしづらくなるはずだと、厚労省は考えたのである。 しかし、大病院はともかく、小規模病院や診療所、薬局などでは、オンライン化のための専用回線を結ぶのは、経費がかかりすぎて現実的ではない。それではと、メールによる添付という方法も考案されたが、これは個人情報の流出の恐れがある。それで、いまのところ、NTTデータがIP-VPNを構築して専用端末を提供するという計画になっている。 だが、これで不正請求がなくなるかと言えば、医者である私の目から見ても、ありえないと思う。 というのは、レセプトの審査というのは、結局は、人間が行うからである。レセプトが審査支払機関に提出されると、請求内容が保険診療として相応しいかどうかのチェック(一次審査)が行われる。それは、結局は人間の眼によるチェックだからだ。電子レセプトといっても「紙」の代わりに画面を見るというだけ。これでは、以前となんら変らない。つまり、ロジカルチェックは不可能に近く、審査でのチェック漏れや甘さは、解消されないのである。 したがって、不正請求はどこまでも患者個人が注意するしかない。そのためにも、病院では必ず請求書をもらうことを忘れてはならない。
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