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18/05/15●「人生100年時代」は大いに疑問。ある面で長寿は残酷である。

 最近、「人生100年時代」という言葉をよく聞くようになった。たとえば、野村証券は「人生100年パートナー宣言」をしてNISAを奨励し、太陽生命保険は「100歳時代年金」というものを売り出している。

 これらの発端は、英ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏らが著した『ライフ・シフト』というベストセラー。この本に目をつけた安倍政権は2017年に「人生100年時代構想」を打ち出し、なんとこれまで6回も官僚や有識者を集めて会議を開いてきている。「一億総活躍社会の実現」というスローガンにピッタリだったのだろう。

 しかし、会議参加者たちは、長寿社会の現実を知らないのではなかろうか?

 

 先ごろ、内閣府は会議の中間報告をまとめて発表したが、それによると、これからは「リカレント教育」(生涯教育)が大切であるとされ、官民併せて努力していくことが提唱されている。とくに、大学教育を改革し、いくつになっても学べ、それによって退職後も起業したり再就職できるようにしたりしなければならいとしている。

 要するに、寿命が100年に延びるのだから、その分、高齢になっても働いて生きろということである。

 

 しかし、医者の私の実感からすると、はたして本当に「人生100年時代」が来るのかは大いに疑問だ。また、仮にそうなるとしても、それが私たちに幸福をもたらすかどうかはわからない。現代はともかく「長寿は素晴らしい」という価値観で動いている。しかし、本当に長寿は素晴らしいことなのか?

 

 すでに、日本人の平均寿命は女性87.14歳、男性80.98歳に達している。医学は日進月歩し、最近はゲノム治療まで行われているので、平均寿命が今後も伸びるのは確実だ。そのため、2007年生まれの人の半数は107歳まで生きられるという予測も出ている。 

 しかし、いくら医学が進歩してもエイジング(老化)は進行する。平均寿命は伸びるが、元気で健康でいられる「健康寿命」が同じように伸びるかどうかはわからない。

 アンチエイジングのためには、つまり医学の進歩の恩恵を受けるためにはそれなりのおカネがかかる。とすると、「人生100年時代」というのは、それを支えるために、若い世代に大きな負担がかかるのは確実ではないだろうか?

 

 仕事柄、老人施設の現場に足を運ぶことが多いが、そこで私が目にするのは「寝たきり老人」の多さだ。正確な統計はないが、介護者数などの統計から推測すると、現在、約200万人の高齢者が寝たきりで暮らしている。これほどまでに多くの高齢者が、寝たきりで漫然と生かされている国は、世界でもありえない。日本は「寝たきり老人大国」なのだ。

 

 私はそういう高齢者の方々、つまり胃瘻や人工呼吸器を付けて生かされている方々から、こう言われることがある。

「先生、もう回復の見込みはないのなら、こんなかたちで生きていたくありません。なんとかしてください」

 これは、切実な願いである。つくづく、長寿は残酷なものだと思う。しかし、医者は“救命装置”を下手に外すと殺人罪に問われかねないので、これができない。

 

 そこで思う。

 高齢者に、リカレント教育をするよりも、いかに心豊かに死んでいけるか、そういう「終末期教育」をするほうがよほど大事ではないだろうか?そのほうが人生は豊かになる。ともかく、長生きすればいいというものではないのだ。

 

 
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