先月、コロナ感染者数がピークで、自宅療養(自宅放置)者が激増したとき、夕刊フジで4回にわたって「自宅で死ないために」をコラム連載しました。今回、それが、別冊新聞「健活手帖」に再録されました。 そこで、ここに第1回の原稿「なぜ「自宅療養」をせざるをえないのか?」を再録します。 新型コロナ感染爆発、自宅で死なないために (1)なぜ「自宅療養」をせざるをえないのか? 日本は「法治国家」とされますが、新型コロナの感染爆発を目の当たりにすると、「放置国家」と言わざるをえません。東京はすでに医療崩壊しており、これ以上、患者さんが増えたら、国民皆保険制度も破綻します。
コロナ患者さんを診ない医師会所属の町医者が批判されていますが、これは制度上仕方ないことです。指定感染症の分類を2から5にしろという意見がありますが、そうしたとしても解決しません。感染者の増加が止まらなければ、解決にはならないからです。 それに、多くの町医者はいま、ワクチン接種に追われながら、コロナ患者以外の患者さんを診ており、こちらもパンク状態です。 先日、政府は、「中等症患者は自宅療養」とした方針を撤回し、「中等症患者の入院を継続する方針」に戻しました。しかし、それは単なる机上の話。現実的にはなんの意味もありません。ベッドも人出も足りないからです。 中等症といっても、症状はさまざまで、示された指標だけで仕分けはできません。厚労省の「治療の手引き」では、息切れや肺炎を発症している場合は「中等症1」、酸素投与が必要な場合は「中等症2」に分類されています。しかし、現場でコロナを診てきた医師でなければ、的確な判断はできません。 それにしても、異常に少ないPCR検査数を、なぜ政府が解消しなのか、私にはわかりません。その結果、私のような医者にも相談が来ます。 「熱と咳が続いているので検査を受けようと、保健所に電話したら断られました。都のコロナの電話相談にかけたら、厚労省のHPで探せと言われました。そこで、ネット検索で民間を当たりましたが、どこも予約でいっぱいでした。先生の伝手でありませんか?」 現在、民間のPCR検査は、値段がさまざま。3000円のところもあれば、2万円取るところもあります。もちろん、行政検査はタダですが、すでに保健所は濃厚接触者も追えない状況なので、申し出てもOKは出ません。それにしても、2万円の出費は学生や若い会社員にはかわいそうです。 多少の発熱、咳ぐらいなら、若い人は病院に行かないでしょう。そうこうするうちに症状が悪化し、PCRで陽性と判定されても、町の病院は診てくれません。保健所に電話がつながったとしても、自宅療養を指示されるだけです。 自宅療養患者の一部は、重症化の危機に陥ります。熱が40度以上になり、呼吸も苦しくなって、救急車を呼びます。しかし、受け入れ先の病院がなく、何時間もたらい回しになるケースが続出しています。都内の救急で働くある医者は、救急車を病院に着けさせ、クルマの中で治療にあたったと言っていました。 現在、感染爆発中のデルタ株は、これまでの株とは違います。感染力が強く、重症化するリスクも高いのです。さらに、ブレイクスルー感染(ワクチン接種後の感染)も起こしています。埼玉県では、8月7日、新規感染者889人のいち23人が2回接種済みでした。 報道ではワクチン接種を終えていない50代の死者がよく取り上げられていますが、数から見ると70代や80代の死亡者数は50代の4〜5倍です。 さらに、後遺症が長引くことが報告されています。半年以上倦怠感が続き、嗅覚も戻らず、何度も病院を受診した患者さんがいます。コロナ治療は無料ですが、後遺症治療は有料です。 もはや「緊急事態宣言」「まん防」などまったく効きません。「国民のために働く」「命と健康を守る」「安心安全」などと繰り返してきた首相も政府も打つ手を失っています。「自助、共助、公助」のうち「共助、公助」はなくなりました。感染・発症しても、自宅で自力で回復するほかないのです。
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