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長生きは本当に幸せか?(3) 半分以上の人が長生きを望んでいない

 年寄りが集まって健康、長生きの話ししかしなくなったら、それはもう終わりと思ったほうがいいでしょう。長生きが目的になってしまった場合、もはやそれは人生ではありません。人は、単に長生きをするために生まれてきたのではないと、私は思います。

 いま、長生きを礼賛しているのはメディアとテレビのコメンテーターたちだけです。いまのメディアは、人間誰もが長生きを望んでいるという「架空の前提」に立っています。

 長生き礼賛は、私たち日本の文化、伝統ではありません。『楢山節考』を読めば、死期を悟った老婆は自ら進んで「楢山まいり」の日を早めることを望み、息子はそれに従います。この小説は日本各地にある「姥捨伝説」に基づいたものですから、日本人は昔から自らの「死に時」を悟って行動していたことがわかります。私たちは、もともと、死に対して謙虚であり、潔いのです。

 

 しかし、現代の医療とメディアは、それを許さないのです。統計から見ると、日本人は男で8.84年、女で約12.35年もの間「不健康期間」(平均寿命から健康寿命を引いた期間)があります。そして、この期間の後半に、多くの人は寝たきりとなります。寝たきり老人の施設に行くと、たくさんの早く死にたいという方に会います。

「先生、もう人生の役目も楽しみも終わってますや。早く逝かせてくれんかなあ」「こんなん、本当に殺生やわ」「ほんまにつらくてたまりません、地獄の苦しみや」

 こうした方々を見て、やがて自分もそうなる可能性があると思うと慄然とします。また、人生の終わりがなぜこれほど悲惨なのかということに、怒りを覚えます。

 

 メディアがいくら隠しても、人生の最期が悲惨、いまの医療のなかで迎える死は苦しみのほうが多いといことを、一般の人は薄々気付いています。

 そのため、長生きに関して意識調査をすると、なんと「長生きしたい」と望む人は半分以下という結果が出ています。日本生命のアンケート調査(2016年、20代から70代までの男女10,973人)によると、「長生きをしたいと思う」人と、「まぁ思う」人を足すと46.3%。半分に達していません。さらに、「長生きができると思う」人と、「まぁ思う」人を足すと29.7%。自分が長生きできると思っている人は、3分の1以下なのです。

 では、長生きとは何歳まで言うのでしょうか?この調査では「何歳から長生きだと思いますか」と聞いています。自由回答ではなく、5歳刻みの選択肢から1つを選ぶ形式になっていますが、一番多い回答は「80歳以上(~84歳未満)」で42.3%、次が「85歳以上(~90歳未満)」で20.0%。つまり、80歳超えが、一般の日本人が抱く長生きで、そこまで健康で暮らせればいいと願っていることがわかります。

 

 そこで、少しでも健康で長生きしたいと望むなら、明確な目的を持つことが大事です。長生きをした人々はほとんどが目的を持って生きていました。

 老人施設に行っても元気な方は「孫が結婚するまでは死ねません」などと、はっきり答えます。

 目的が明確になったら、次は常に「死に時」を視野に入れて生きることです。自分なりのゴールを決めること。そうすれば、たとえば同じ青い空を見ても格別美しく感じ、生きることへの愛しさが倍加します。

 そうして次が、健康への留意です。十分に睡眠を取り、偏った食事をせず、適度な運動をし、規則正しく暮らすことです。

 

2019年5月 

 
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