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長生きは本当に幸せか?(9) できる限り早く意思決定を!「ACP」(人生会議)の取り組み

 厚労省の意識調査によると、自分の死が近い場合に受けたい医療を「家族とまったく話し合ったことがない」という人が、いまだに6割に上っています。半数以上の人が、人生の終末期をどうすべきかまだ決めていないのです。

 具体的に言うと、延命のための人工呼吸器や胃に直接穴を開けて栄養を送る胃ろう、がんなどの痛みを和らげる緩和ケアなどに関してどうするか、意思を明確にしていません。その結果、いざそうなったとき、本人も家族も、そして医療側も混乱します。

「ピンピンコロリ」、つまり、それまで健康でいて、ある日突然、天国に召されるのが理想的な死に方とされます。本人も苦痛を感じることはなく、介護が必要になって家族に迷惑をかけることもないからです。しかし、そんな死に方ができる人はほとんどいません。

 

 「病院死」がいまだに8割の日本ですが、最近では、多くの人が「自宅で看取られて死にたい」「延命治療などはしないでほしい」と考えるようになりました。ここ10年ほどで、意識が大きく変わってきたのを感じます。

「リビンググウイル」という言葉があります。これは、「生前の意思」という意味で、「いざというときに受ける医療や処置をどこまで希望するか」を文書などにして残します。「事前指示書」とも言います。「遺言書」に匹敵する「エンディングノート」にも、これは含まれます。

 

 こうした言葉は、ついこの前まで、一般化していませんでした。10年前、患者がこんな言葉を言い出せば、医者は「うちはそういったことに対処できないので退院してほしい」と、平気で言ったものです。多くの医者は、医療は施すものであり、患者の意思で治療法を変えるなど考えたこともなかったのです。

 

 しかし、時代は変わりました。私がさんざん批判してきた胃ろうですが、年々、認知症で胃ろうを施術されている患者は減っています。変わり目は2014年で、この年から胃ろう手術の診療報酬が4割削減され、安易に胃ろうを施術しなくなりました。それでも、胃ろうの代わりに、「中心静脈栄養」や「経鼻胃管」といった方法で、静脈や鼻から管を通して栄養剤を投与する「経管栄養」という名の延命医療が行われています。

 

 医療側の意識も大きく変わりました。いまでは、患者の意思を尊重しないで医療行為を行う医者はいなくなりました。厚労省も大きく変わり、数年前から、「ACP」(Advanced Care Planning)を提唱し、それを実行する病院が増えました。ACPとは、患者と家族、医療側が終末医療に関して話し合い、それを文書に残す取り組みのことです。昨年、厚労省はACPの日本語愛称を募集し「人生会議」が採用されました。

 

 人生会議は、できる限り早く行っておくべきです。状態が悪化してからでは、判断が出来なくなる場合が多いからです。ただ、結論を急ぐのではなく、医者の説明を繰り返し聞き、考えを固めることです。ACPに取り組んでいる病院は増えているので、そうした情報もネットなどで収集すべきでしょう。

 ACPが行われていれば、いざというときの心配はなくなります。どう看取られるかの心配もなくなります。

 

 2019年5月 

 
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