厚生労働省が11月24日、国民が1年間に使った医療費の総額を示す国民医療費が2008年度は前年度比2.0%増の34兆8084億円となり、過去最高を更新したと発表した。 これで、国民所得に対する医療費の割合は9.9%と、1割に迫ることになった。 また、国民1人当たりの医療費は2%増の27万2600円。年齢層別では65歳未満の平均が15万8900円だったのに対し、65歳以上は67万3400円と現役世代の4.2倍にのぼった。75歳以上では83万円となり、なんと5.2倍にもなる。 日本は少子化で人口が減少に転じたが、逆に高齢化で医療費は増えるばかり。現役世代が高齢者をどこまで支えられるか、この先不透明なところまできてしまったようだ。 医療費が増え続けるのは、高齢者の増加に加え、薬価が高い新薬の開発など医療技術の進歩によって同じ病気でも治療費が多くかかるようになってきたためだ。今回の増加の原因は、がんなどの治療費が0.8ポイント、新しい抗がん剤の開発などを含めた医療技術費が1.5ポイントと、全体を押し上げたことにある。これには、公的保険の適用範囲が新技術に拡大されたことも影響している。 今後も国民医療費は増え続けるのは間違いなく、厚労省は「10〜25年度に平均で年2.2%程度増える」と分析している。 以下は、ここ15年の国民医療費の推移を厚労省の資料から抜粋したものだが、このペースでいくと、今年(2010年度)は、国民1人当たりで30万円を超えている可能性がある。 《国民医療費の推移》 国民医療費 国民1人当たり 1994年度 25兆7,908億円 20万6,300円 2004年度 32兆1,111億円 25万1,500円 2006年度 33兆1,276億円 25万9,300円 2008年度 34兆8,084億円 27万2600円 【出典】厚生労働省統計情報部「統計要覧」 そこで、政府は、世帯収入に応じて医療費の患者負担に月額の上限を定める仕組みを来年度にも見直す作業に入っている。高所得層の上限を上げて負担を増やし、それを原資に年収 200万円〜300万円の比較的所得の少ない層の負担を軽くする つまり、豊かな層から貧しい層に、お金をトリクルダウンさせようというもの。とりあえず年収800万円以上の層の負担を上げる方向というが、これには異論も出ている。いずれにせよ、再来年辺りから、年収1000万円以上の層では上限が10万円程度上がると思われる。 |